使用OptiTrackシステム
- FLEX:V100カメラ14台
- Flex3(旧V100:R2)カメラ4台
使用ソフトウェア
- Motive:Body(旧:Arena)ソフトウェア
- Motive:Tracker(旧:TrackingTools)ソフトウェア
2008年より独立行政法人労働安全衛生総合研究所人間工学・リスク管理研究グループの研究員となる。主にバイオメカニクスの視点から労働現場での転倒・転落・墜落などの災害予防に関する研究に従事している。
独立行政法人
労働安全衛生総合研究所
大西明宏氏
OptiTrack導入の経緯
Viconを8年、MAC3Dを1年使用してきた大西氏。光学式モーションキャプチャーシステムのベテランとも言えるが、現在の職場に移ったところ、研究所にはモーションキャプチャーシステムがなかった。労働者の作業解析を行うためにモーションキャプチャーシステムを探していた大西氏の目に留まったのがOptiTrackシステムである。当初、ファウンデーションパッケージ(6カメラ)で導入いただいたが、キャプチャボリュームの制約により満足できる結果が得られなかったため、4台増設いただき10台にしたところ、歩行であれば1周期以上の計測ができるようになった。現在は14カメラでお使いいただいており、作業時によく見られるかがみ姿勢等の動作でも下肢マーカーの入れ替わりが大幅に削減したとご満足いただいている。
ワークフロー ~マーカー貼付からデータ出力まで~
まず、大西氏の研究ではマーカーの貼付位置が極めて重要である。基本的にキーとなる骨や関節の延長線上の皮膚の上にマーカーを貼付するのだが、まず被験者の関節をぐるっと動かしたりしながら骨の位置を注意深く探り、貼付ポイントからズレないように正確に貼りつける。取得したいポイントは臨床歩行分析研究会が提唱するDIFF(Data Interface File Format)に準拠した10点。さらに肘関節と手関節が追加されると,上肢を考慮した重心位置の算出や運動も算出できるので上後腸骨棘のダミー(1点)と上肢(4点)の合計15点である。Arenaのskeletonを利用するためには全身34点のマーカー貼付が必要だ。
大西氏が取得したい15点のうち13点はArenaのskeletonで指定された場所とダブるが、残り2点は別の場所となる。そこで34点のデフォルトマーカーセットにエキストラマーカーを2点プラスして合計36点で実際のキャプチャを行っている(右写真参照)。以前はスーツを着用せず、被験者に直接マーカーを貼り付け、ArenaのRigidBody機能を使って左右の足部・下腿部・肩関節周辺部・骨盤の合計7パートでキャプチャを行っていた。そのためマーカー貼付・取り外し時間がかなりかかっていた。
直接体にテープで貼りつけるため汗をかくと剥がれることもあるし、微調整するのも一苦労である。さらにすべてのRigidBodyの形が異なっていないとスワップを起こしやい。それに対して、skeleton機能を使用すればオートトラッキングが向上し、欠落の少ないデータを取得できる。人力による重量物取扱の基準となる職場における腰痛予防対策指針にある重量物の取扱い重量で示されている重量を参考にしながら、実際に荷物の運搬をキャプチャした。荷物を持ち上げる際、あるいは荷物を床に降ろす際、足元のマーカーが隠れてしまうかと思ったが、6カメラが下方に設置されているため、特に欠落なくデータを取得できた。取得したデータはc3dフォーマットで出力し、C3DEditor(Motion Lab System社)を用いてASCII形式にしている。RigidBody機能でのキャプチャではC3Dで出力する際に、各マーカーの番号の前にRigidBodyの名前(Head、Hipなど)の区別がつかず全てrootという名前が付くのに対し、skeletonを使用してキャプチャすると、各マーカーはHead1、Head2、Hip1、Hip2などのラベルが付いて出力できる。
大西氏の場合、36マーカーのうち必要なマーカー15点が決まっているため、後処理の際に必要なマーカーだけ抽出する必要がある。よってマーカーのラベルが付くか否かで大きな差がある。後処理の手間を省くという意味でもskeleton機能を使用したキャプチャの方が圧倒的なメリットがありそうだ。キャリブレーション、被験者へのマーカー貼付、キャプチャ、データ解析、これらすべての作業は大西氏ひとりで行っている。
今後に期待すること
まずは1点でのトラッキングを強く希望されている。これは他のお客様からも多く寄せられる要望であるため、なるべく早く改善してほしいと願う機能のひとつである。またフォースプレートなどと一緒にモーションキャプチャデータを取得することも多々行われるため、外部機器との同期についてもできるとよい機能として挙げられている。これについては、2009年夏を目途に外部同期が可能になる新しいハブをリリース予定である。乞うご期待!