使用OptiTrackシステム
- Prime13カメラ 12台
- eSync2 1台
- A/Vリモート 4台
使用ソフトウェア
- Motive:Body(旧:Arena)ソフトウェア
- Motive:Tracker(旧:TrackingTools)ソフトウェア
2011年4月より武庫川女子大学にて講師をつとめる小笠原先生は主にスポーツ外傷のメカニズム解明に関するバイオメカニクス的研究を行っています。
武庫川女子大学
小笠原一生氏
※現在:大阪大学大学院医学系研究科
研究室のミッションは子供から高齢者まで、競技スポーツからレクリエーションまで、様々なレベルの「ヒト運動」を対象に、運動の巧みな制御方略や、効率的な学習方法を解き明かし、国民の健康と安全なスポーツライフに資することだそうです。具体的には・・・
1)スポーツ医工学、バイオメカニクス、電気神経生理、認知心理学を融合させた実験系にて上記のミッションに挑戦しています。
2)スポーツ医学関連の新規なトレーニング機器、運動能力評価機器を開発しています。
3)企業からの依頼研究、製品評価実験等を行っています。
4)女性を中心とした若手研究者の育成を行っています。
以前所属していた産業技術総合研究所(茨城県つくば市),国立スポーツ科学センター(東京都北区)ではViconのMXカメラを20台ほど使用していたという小笠原先生ですが、腕の運動など体の一部分をキャプチャするというニーズにはもう少しコンパクトでシンプルなシステムが適するのではないかと感じていました。webで非常に安価なOptiTrackシステムを知り導入していただくこととなりました。スポーツ分野での使用ということで当初250HzのS250eカメラを導入いただきましたが、Prime13カメラがリリースし、カメラをアップデートしていただきました。
元阪神タイガースの藪投手も小笠原研究室の院生!
元阪神タイガースの藪投手と一緒にモーションキャプチャを使って分析していらっしゃいます。
元阪神タイガースの藪投手との実験
今まではビデオカメラを使ってフォームをチェックしていましたが、モーションキャプチャで三次元データが取得できるため、視点を即座に変更してフォームの変化を確認しやすいのが新鮮で評判がよいとおっしゃっていました。“モーションバンク” を作るのを目指しており、例えばシーズン前後のデータを見てフォームがどのように変わったかを比較したり、手術受ける選手の手術前後のフォームを比較したりして活用したいと考えています。先生のように数値データが欲しい人はC3D、CSV形式で位置・姿勢データを出力し、後から数値で解析し、現場のコーチはMotive:Bodyではリアルタイムに様々な角度からCGマネキンを確認しフォームをチェックしています。ユーザー様のニーズに合わせて幅広くお使いいただけるシステムであるというのは魅力だと思います。
スポーツにおけるケガの研究では
小笠原先生はスポーツにおけるケガの研究をしています。特に膝前十字靱帯損傷という重篤なスポーツ外傷の発生メカニズムの解明とその予防の研究に注力しているそうです。膝前十字靱帯損傷は球技に多く発生するケガであり、ジャンプ着地や急な方向変換で起こります。膝は特定の方向から外力を受けると脱臼して靱帯が損傷します。このメカニズムは諸説あるのですが、小笠原先生のモデルによれば、「かかと」から着地した場合では、膝が特定の方向から外力を受ける確率が高まることが予想されるとのことでした。そこで、この予想を実験的に確かめるため、Motiveソフトウェアによる三次元データとフォースプレートでの床反力データから着地時に膝に作用した外力を計算したところ、やはり、かかとから着地して急に方向を転換する場合と、つま先から着地して急に方向変換する場合と実際はひざにかかる負担が大きく変わっていることがわかりました。また、ケガのリスクがある選手は、着地時の膝のブレが大きいこともモーションキャプチャを通じて明らかになりました。これらの研究のアウトカムですが、モーションキャプチャ実験の様子をわかりやすく加工してスポーツ外傷予防の啓発資料として学生アスリートに提供しているそうです。
クラシックバレエにおいて美しいと感じる回旋とは?
河野さん(修士2年)が研究しているのはクラシックバレエにおける肩の回旋動作(関節を回す動作)についてです。見ている人が美しいと知覚する回旋量はどの程度のものなのか?!適度な回旋を描けば美しいと知覚するはずだという仮説のもとプロのバレリーナとそうでない人の計測データをDAZスタジオというフリーソフトでCG化して比較しています。
Viconと比較すると?
Viconは非常に高価で歴史のあるモーションキャプチャシステムであり、オートラベル機能や他の計測機器との連動については、標準機能としてViconのソフトウェアで処理できるそうです。今のところOptiTrackにはその機能はありませんが価格や性能を考慮してもOptiTrackの方が先生には向いていると判断していただきました。というのも小笠原先生はプログラムも自身で使いこなす自称ちょっと変なバイメカ&体育系の人だそうで、SDKでいろいろ開発できるフレキシブルなところを活かして足りない機能をカバーしているそうです。以前TrackingToolsの時は剛体を定義しなければマーカーにラベルが付けられず、自身でマーカー単体にラベルを付けていたので後処理の時間が非常にかかっていましたが、Motiveになってから単体マーカーでラベリングできるようになりマーカーデータの後編集(クリーンナップ)もできるようになったので後処理にかかる時間が大幅に短縮され本来の解析作業に時間をさけるようになりました。
※オートラベル機能については将来のMotiveに搭載されるようリクエスト中です。
Motive + eSync2 + LabVIEW でどんな実験もできる?
前項で述べた通り先生は自分たちの実験をプログラムで組んでいます。現在、LabVIEWでフォースプレートなどのアナログ信号を計測しているということですが「MotiveとeSync2とLabVIEWがあれば大概どんな実験でも組めますよ!」とおっしゃっていただきました。リアルタイムストリーミングではMatLabサンプルなどもサポートされ、研究者の皆さまにはどんどん使いやすいシステムになることを今後も期待したいと思います。