コストを抑えつつ高度なスポーツ動作分析~武道の踏み込みや野球のバッティング等~
コストを抑えつつ高度なスポーツ動作分析~武道の踏み込みや野球のバッティング等~
- 2025-11-18
- 人の計測/解析
- OptiTrack
- 剛体
東京国際大学 人間社会学部 麓•赤池•小川研究室
東京国際大学 人間社会学部
麓•赤池•小川研究室
基本情報
- 筋肉や神経と人体動作の関連性の解析
- 簡易にシステムが組めてかつ高精度な数値解析が可能に
脳波や視線情報と同期させ、より多角的な動作解析
- スポーツ動作を数値証明し指導現場へ応用
導入の経緯
筋肉や神経の結果として現れる人体動作を可視化したかった
― どのような経緯でモーションキャプチャーの導入に至ったのでしょうか?
もともと私たちは脳波や筋電図といった電気生理学的な手法で筋肉や神経の活動を研究していました。当時武道の踏み込みの動作について研究をしており、筋肉の活動を取っていたのですが、それだと筋活動が起こった結果、どのように動作として現れるかがわかりませんでした。その筋活動の結果として現れる動きをモニターする必要が出てきたのがOptiTrackを導入した大きなきっかけです。
― なぜスケルトンデータをトラッキングできる”Motive:Body”ではなく、”Motive:Tracker”を選んだのでしょうか?
Motive:Tracker:マーカーの3次元位置や剛体の3次元位置・姿勢をトラッキングできるソフトウェアです。
Motive:Body:”Motive:Tracker”の機能に加え、スケルトンデータをトラッキングすることができます。論文審査のある専門誌で何度も使用されている多くのマーカーセットのライブラリを提供します。
研究内容紹介
武道の踏み込み動作における「力の抜き」の科学的解明
先行研究において、武道熟練者の踏み込み動作では腰部が一度沈む「Vシェイプ」軌道を描くことが示されていましたが(Hirataet al, 2013 International Budo Conference)、そのメカニズムは不明でありました。本研究では、このVシェイプが「前足の力の抜き(脱力)」によって生じるという仮説を立て、検証を行いました。
モーションキャプチャーで腰部(仙骨)の動きを、無線筋電センサーで下肢の筋活動を同時に計測しました。その結果、熟練者においてVシェイプ(腰部の下降)が開始される直前に、前足の大腿四頭筋の筋活動が休止する明確な時間的関係性を確認することができました。これにより、熟練者特有の鋭い踏み込み動作が、意図的な「力の抜き」によって引き起こされている可能性を科学的に裏付けました(Fumoto et al, 2017 International Budo Conference) 。
野球の打撃精度と「頭部の動き」の関連性
「野球のバッティングでは、カーブのようにリリース直後に上方向に抜けるような軌道を取る球種を打つ場合には、投球視認活動に伴い、頭部の上方変位が増幅され、打撃精度を悪化させる可能性があります。本研究では、球種、球種の既知未知、ヘルメット装着の有無が、ホームベース方向に移動してくるボールを打つ際の打撃精度にどのような影響を及ぼすのかを調べました。
実験では顔の向きと腰の位置をトラッキングしました。さらにバットの先端に赤外線反射マーカー、ボールの周囲には赤外線反射テープを巻きつけ、インパクトのタイミングもわかるようにしました。
カーブのように浮き上がる軌道をとる投球と、ストレートの球種を混在させてバッティング試技を行った結果、カーブの視認活動に伴い頭部が上方に動くほど、打撃精度が落ちる傾向を確認することできました。さらに球速が低下するカーブ打撃時は体が投手方向に並進しやすく、それに伴い腹筋の筋活動が弱まることも確認できました。野球の指導現場では「スイングを固めろ」とよく言われますが、この実験から、複数の球種に対応するためには一つの打ち方だけでは難しいことが考えられます(Akaike et al, 2024 Advances in Exercise and Sports Physiology)。
導入効果やメリット
トラッキング精度と使いやすさの両立
―OptiTrackに対してどのようなメリットを感じましたか?
―動作解析の先にどのような応用をすることができましたか?
―今後の展望があればお聞かせください。
現状はOptiTrack単体で直感的に行える分析で研究目的を果たせていますが、将来的に新しい研究者が加わった際には、他の解析ソフト(筋骨格モデルなど)と連携させた、より高度な解析にも挑戦したいと思っております。
その他OptiTrackを用いた研究内容
麓・赤池・小川研究室では、現在も様々なスポーツ動作の解析にOptiTrackを活用しています。
研究例①:平地と傾斜(マウンド)による投球パフォーマンスの違い
平地と傾斜(マウンド)で投球パフォーマンスが変わる原因を探るため、モーションキャプチャーを用いて動作解析を行っています。平地と傾斜という条件の違いが、踏み出し足の筋活動や、着地から腕が伸びきるまでの時間にどのような変化をもたらすのかを分析し、フォームの安定性に影響を与える要因を探求しています。
研究例②:「言葉がけ」による選手のパフォーマンスや心理状態への影響
「言葉がけ」がスポーツ動作や心理状態に与える影響を研究しており、バスケットボールのフリースロー動作に着目し、言葉がけの影響を多角的に分析しています。
モーションキャプチャーと同時に脳波や視線、瞳孔径を計測し、言葉がけとそれらの数値、体の動きの関連性を解明しています。
研究例③:脳活動・視線・動作の連携を解き明かすバドミントン研究
→バドミントンのサービスのように、静止状態から開始される動作では、動作前の「運動準備状態」がパフォーマンスを大きく左右します。本研究ではモーションキャプチャを利用して、サービス動作時のラケット操作やシャトルの軌道などの解析を行い、サービス前の運動準備状態の脳波および視線との対応を検討しています。
東京国際大学 人間社会学部 麓•赤池•小川研究室
運動生理学・スポーツ科学を専門とし、アスリートのパフォーマンス向上から子どもの運動指導まで幅広く研究しています。 最大の特徴は、モーションキャプチャー(動作分析)と、脳波・筋電図・視線といった電気生理学的手法を組み合わせた多角的なアプローチです。 スポーツ現場の「感覚」を「数値化・可視化」することに注力し、得られた知見を学生教育にも還元しています。
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