©Bandai Namco Entertainment Inc. / ©2024 FromSoftware, Inc.
フロム・ソフトウェアが創り出す『ELDEN RING』を支えるOptiTrackの技術革新――本格ダークファンタジー製作の舞台裏
中小規模のスタジオでバーチャルプロダクション&モーションキャプチャー
- 2024-12-19
- CGアニメーション
- OptiTrack
- 全身

株式会社フロム・ソフトウェア
基本情報
『ELDEN RING』や『DARK SOULS』シリーズ、さらには『ARMORED CORE』シリーズなどを手掛けている株式会社フロム・ソフトウェア。日本のゲーム業界の中では中堅規模のゲーム開発会社でありながら、ワールドワイドで高い評価を受けるタイトルを多数生み出し続けています。
同社は、本格的なダークファンタジーの世界観や、歯ごたえと達成感のあるゲームデザインを得意としています。
2023年8月の社屋移転に伴い、光学式モーションキャプチャーシステムのOptiTrackをアップデートしていただきました。今回はゲーム業界をリードし続けているフロム・ソフトウェア内でのOptiTrack運用に深くかかわっている4名にインタビューさせていただきました。
- モーションセクション ムービーセクション リーダー / モーションデザイナー/ビジュアルアーティスト 山岸 孝明様
- モーションセクション チーフ / モーションデザイナー 登林 大裕様
- モーションセクション / モーションデザイナー 相崎 友紀様
- モーションセクション / モーションキャプチャーエンジニア 那須野 里咲様
- スタジオ拡張に伴うシステムのアップデート
- モーションキャプチャー収録の内製化
- 特定動作におけるマーカーロストの減少
導入の経緯
OptiTrack導入の舞台裏
― OptiTrack導入の経緯はどんなものでしたか?
山岸様(以下、山岸): (最初の導入は2011年)当時は『Demon’s Souls』を制作しており、我々が作るアクションゲームは、「モーションキャプチャーをそのまま使う」のではなく、「(ゲームのプレイヤーが)触っていて気持ちいいもの」を目指していました。そのため、実装後に何度もトライ&エラーを繰り返しながらアニメーションを調整するワークフローを採用していました。OptiTrackでの収録も加工前提で行い、ある程度の粗は気にせず「アクターの演技を忠実に再現する」よりも、手軽に撮影できて安価で、当時の笹塚の社屋に後から導入できるものを探していました。そこで、費用対効果の面で導入のハードルが低かったOptiTrackを選択しました。

OptiTrackは1mm以下の精度でトラッキングできるクオリティを持ちながらも、セットアップが簡単で、コストパフォーマンスにも優れた製品です。

モーションセクション ムービーセクション リーダー / モーションデザイナー/ビジュアルアーティスト
山岸孝明様
初期導入から12年 -- 進化したOptiTrackを実感
― システムアップデート後の効果はいかがですか?

光学式モーションキャプチャーシステムは、死亡演技等倒れるような動作は多くのマーカーが視えなくなってしまうため、本来得意としておりません。しかしOptiTrackの最新ソフトウェアではスケルトンソルバが大幅に進化しており、マーカーの多くが隠れても破綻することはほとんどありません。

OptiTrack使用事例
『ELDEN RING』のDLC「SHADOW OF THE ENDTREE」にて使用
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コンテンツ制作のワークフローに新たな展開
― 近年での使用事例を教えていただけますか?
登林様(以下、登林): 『ELDEN RING』のDLC(ダウンロードコンテンツ、ここでは「SHADOW OF THE ERDTREE」を指す)の制作にもOptiTrackを使用しました。主にNPC(ノンプレイヤーキャラクター、フィールドに配置されていて話しかけることができるキャラクター)の収録に使うことが比較的多いです。また、ジェスチャー(プレイヤーが操作することで特殊な演技を行い、感情表現をするシステム)にもOptiTrackを活用しました。人間らしい動きが求められる場合に特に有効でした。 さらに、ディレクターの意図を強く反映させたい場合には、ディレクターの目の前で動きながら実際のモデルでプレビューする方法を取りました。これにより、ディレクターから直接意見をもらいながら進めることができるという利点があるので、このような場合にもOptiTrackを活用することがあります。

モーションセクション チーフ / モーションデザイナー
登林大裕様
山岸:あとは、タイトルによっても利用頻度に差があります。弊社の過去作『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』では、人型のクリーチャーが多かったため、モーションキャプチャーを多用していました。一方で、メカを操作する『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』ではモーションキャプチャーを利用していませんでした。

―例えば、さきほどのNPCのモーションキャプチャー収録の場合は、アニメーターの方が実際にアクターをされているのでしょうか?
そうですね、自分がスーツを着てディレクターの前で飛んだり跳ねたりすることもあります。また、女性の演技を撮りたい場合には、女性社員にアクターをお願いすることもあります。基本的には社内の人間がアクターを務め、実際に動きます。 アニメーター以外にも、作ろうとしているものに詳しい人を呼ぶことも多いです。例えば、そのキャラクターの企画を担当している人を呼んで、実際にその人に動いてもらうこともあります。

モーションキャプチャーシステムは効率的にアニメーション制作ができるといったメリットの他に、直感的にアニメーション付けができるため企画者やディレクターとのイメージのズレが発生しにくいといった利点もあります。
撮影体制や収録~制作までの流れ

タイミングを選ばず、コンパクトな運用が可能に
―社内でモーションキャプチャー収録を行う際の体制を教えてください
登林:NPCの場合、オペレーター、アクター、ディレクターと演技に意見を出す人がもう1名加わり、合計で4名で行うことが多いです。
―セッティングにはどれくらい時間がかかりますか?

OptiTrackはセットアップが簡単で時間がかからないため、効率的にモーションキャプチャーをすることが可能です。

モーションセクション / モーションキャプチャーエンジニア
那須野里咲様
―およそ収録にどれくらい時間を割きますか?
―モーションキャプチャー収録後の流れを教えていただけますか?
登林:
基本的には、撮影したデータを3dsmaxのBipedで使える形のアニメーションデータに変換し、各作業者に渡します。

相崎様(以下、相崎): Motiveからスケルトンを出力し、それをMotionBuilder上でキャラクターにリターゲットして、そのデータを作業者に渡す流れになります。クリーンナップに関しても、旧システムではかなり時間がかかっていましたが、新システムになってからはほとんど必要なくなり、以前よりもコストがかからずデータを渡せるようになりました。

モーションセクション / モーションデザイナー
相崎友紀様
OptiTrackの使用感
壊れないスケルトンで圧倒的な時間節約に
― 新システムでの使用感はいかがですか?
登林:倒れたり寝たり、膝をついたりといった動きも収録の必要があるのですが、旧システムではそういった動きを撮影すると破綻やノイズが多く見られることがありました。しかし、新システムになってからは、そのような問題がほとんどなくなりました。
相崎:旧システムでは、寝そべった際にスケルトンが破綻してしまい、Motive機能の一つであるEditツールでカーブを補修していました。しかし、新システムに変わってからは倒れたり寝たりしてもスケルトンが壊れなくなったので、カーブでの補修をせずにデータを担当者に渡すことができるようになりました。カーブの補修によって手が入ると、少なからず撮影時の『ディレクターの意図』と離れてしまう可能性があるため、加工前提のデータではありますが、撮影時の印象を損なわないデータを担当者に渡したいと考えていました。
登林: もともと弊社は「(ゲームのプレイヤーが)触っていて気持ちいいもの」を目指してアニメーション作成しているため、収録した演技をそのまま使わずに手で修正していきます。しかし、ベースとなるデータがあるかないかで、進む方向に大きな違いが出てくると思います。その点で、OptiTrackで収録できる環境があるのは非常に良かったと思います。

今後の展望
山岸: そうですね、Motiveにはまだ活かしきれていない機能があるので、専属エンジニアの那須野と活用方法を掘り下げていきたいと思います。
また、これまでは、精度を求める収録や、多人数の収録には外部のスタジオを利用させていただく機会もありましたが、新システムの精度であれば社内で収録できる幅も広がりそうです。
登林:以前はオペレーターにも人員を割かなければならず、アニメーターがオペレーションを兼任していることもありました。そのため、何かを撮影したい時には他の作業の工数を削る必要があり、期間的にもコスト的にも厳しいことが多々ありました。しかし、現在は那須野さんがオペレーションを担当してくれるので、アニメーションのベースとなる動きが欲しいという要望に対応しやすくなりました。これからは、そういった声にどんどん応えていけると思います。
株式会社フロム・ソフトウェア

今回の株式会社フロム・ソフトウェア様へのインタビューでは、新社屋移転に伴ったOptiTrackアップデート後の使用事例を中心に、様々な興味深いお話をお伺いすることができました。
フロム・ソフトウェア様の革新と挑戦は、これからもゲーム業界に新たな風を吹き込み続けるとともに、世界で高い評価を受ける作品を世の中に送り出し続けていただきたいと心から願っております。今後のご活躍を心より楽しみにしております。
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